知らぬは彼の人ばかりなり・その後
その日、青騎士団長マイクロトフはいつものように青騎士団の詰め所に向かっていた。ところが、扉の前まで来てみると、なにやら中がやたら騒がしい。詰め所の扉は比較的厚いので、どんなに団員が騒いでいても、いつもならば少々声が漏れる程度である。故にここまで騒がしいのはおそらく、
「……またトトカルチョか……」
青騎士団員の賭け好きには困ったものである。賭けといってもそれほど悪質なものではなく、どちらかといえばトランプのような一種の遊戯であった。娯楽が少ない世界であり、まして青騎士団員は日常はいたって真面目な者ぞろいである。堅物の団長であってもこれを取り締まることができないのであった。
今度は何が対象になっているのかと思いながらドアを開けると衝立の向こうから声が聞こえてくる。
「どうするんですか!? もう5回目ですよ、仕切り直すの」机をたたく音が聞こえる。
「いつまでたっても動かれないとはな……」
「結構早いと思っていたんですけどねぇ」
と、衝立の向こうから1人の青騎士が出てきた。彼はマイクロトフを見ると、まるで山道で熊に出会ったかのように固まってしまった。
「どうしたんだモール?」
向こうからこの騎士の名を呼ぶ声が上がった。モールは金魚のように口をパクパクさせている。そして部屋内の団員たちも、衝立の向こうから現れたその姿に凍りつくのだった。
中にいる団員たちは、その服の色にかかわらず一様に固まっていた。青騎士団員の賭け好きは有名だが、それに他団員が参加するという話は聞いたことがない。彼らがなぜ固まっているのかはわからないが、おそらく何か良からぬことでもしていたのだろう。それくらいはわかった。
「何をしていたんだ?」
「な、何もしておりません! ただのトトカルチョですっ」
「だが、どうやら俺がいるとまずいことのようではないか。場合によっては処分も有り得るぞ」
マイクロトフに睨まれ、団員はまことに情けない顔になってしまった。
「……マイクロトフ様を対象にしていたので……」
「俺? 何をだ」
「あの………………『団長はいつカミュー様に告白するか』と……」
今度はマイクロトフが固まった。真っ赤になって叫んだ。
「な、なんでそんなことを!?」
「団長のカミュー様を見る目付きが少しおかしいと思ったもので。……そうじゃないんですか?」
目を白黒させて考え込んでいる。良くも悪くも感情が表に出やすい人間である。団員たちは口々にその時の様子などを語り始める。
「どう見ても”恋する者を見る目”でしたが……?」
ぐるぐると表情と顔色を変化させるマイクロトフ。人間信号機になってしまった。
「カミュー様も気づいてらっしゃいますよ。トトカルチョに参加されていますし」
一人の騎士が苦笑しながら呟く。
「っていうか、どうもあれは”待っている”んだと思いますが」トドメ。
マイクロトフに「『っていうか』と言うな」と注意する心の余裕は無かった。
「うおぉぉぉっ〜!! カミュ――――!!!!」
言うが早いか部屋から飛び出していった。
団員たちはあまりの出来事にしばしぼうぜんとしていたが、やがて落ち着き始める。
「…………”今週”に賭けていた者はいるか?」
「あ……僕、賭けてました」
「お前か、モール……」
数日後、カミューが青騎士団詰め所にやってきた。
「私が賭けていたのは外れてしまったね。”どちら”なのかは……見ていればわかるよ」
今まで騎士達が見たことの無い華やいだ笑顔でそう言った。
「知らぬは彼の人ばかりなり」を知人に見せた所、「続編求む」と言われたことより調子に乗って作成。
こんなアホウなことがきっかけでくっつかれると泣くしかないです。
当然自分内でのくっ付き話は別にあります。
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